人間の生活に深く入り込み、進化を続けるAI。
デザイナー&コピーライターの私は普段、ホームページやパンフレットなどでデザインと文章を作っているのですが、最近では、AIがホームページやパンフレットをデザインしてくれて、文章まで用意してくれる時代になりました。
そんな昨今では、「AIの文章はそのまま使うのではなく、人間が確認して修正すること」という注意点をよく目にします。
私は毎回、分かったような、いまいち分からないような、モヤっとした気持ちになります。
- AIの提案した文章をそのまま使うと、具体的に何がどう問題なの?
そんな風に感じていらっしゃる方は、私以外にもいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、私が実際に体験した、お客様がAIの文章をそのまま採用されていたことで不都合が生じた事例を紹介したいと思います。
はじめに|一般論
まず初めに、一般論として、AIの提案した文章をそのまま使った場合に考えられる問題から。
- 間違った情報が混ざる可能性がある
- どこかで誰かが作ったものと似てしまう
- 綺麗な文章なのに、なぜか頭に入らない
AIは、もっともらしい文脈で文章を組み立てることが得意です。
その一方で、内容の正誤を確認しているわけではないため、一見正しそうに見える誤情報が混じることがあります。
また、AIは、「平均的で王道な構成」且つ「よく使われる文章構造・言い回し」を多用するため、どこかで見た誰でも書けそうな文章になりがちで、SEOやブランディングには適さない事が考えられます。
そして最後に、微妙なニュアンスの違いなどで斜め上に着地していることがあり、人はこのわずかなズレにも違和感を感じるので、「文章は綺麗なんだけど、結局何が言いたいのかよく分からない」という文章になりがちです。

AIの提案をそのまま使うなと言われる本当の意味
これらはよく言われる一般論ですが、私が現場で感じている「本当の問題」は、もう少し別のところにあります。
最初に言ってしまうと、AIを使うには、AIを正しく使いこなせる知識が人間側にも必要なのだと強く感じているのです。
たとえば、今、私の9歳の姪っ子ちゃんが小説を書いているのですが、もし仮に彼女がAIの力を借りて、大人のラブストーリーを書こうとしたとします。
彼女が構想からAIに相談して物語ができたら、きっと文章は流暢でそれらしい物語になるのでしょう。
それを読んだ彼女は大喜びして、周りの大人に「読んで読んで」と勧め、
でもそれを読んだ大人はきっと「よく分からないけど何とも言えない微妙な違和感が残る」と感じると思うのです。
それは、AIも彼女も、実際に自分で経験した知識がないから。
もしその物語を、大人が自分の経験や感情を踏まえて書き直せば、現実味のあるオリジナルストーリーになるかもしれません。
要は、AIがあれば何でもできるわけではなく、AIの出してきたものの良し悪しを判断できる知識がないと、AIを使いこなすのは実は難しい、という事です。
この例は極端に聞こえるかもしれませんが、実際のクライアントワークでも、知識による判断が必要な例は少なくありません。

クライアントワークで起きた事例1|AIへの指示が難しい
最近のクライアントワークでは、お客様がご自身の考えやイメージを説明するためにAIを使って案を作って下さることがあります。
実際に私も、AIで作成した完成イメージを渡された事があります。
ただ、この時に注意しなければいけないは、AIへの指示(プロンプト)の出し方です。
お客様がお客様目線で書き込んだプロンプトをもとに作られた場合、往々にして読み手目線で最適化されたものにはならないのです。
私がいただいた案は、プロのコピーライターの目線で見た場合には、下記のような問題点がありました。
- ごく一部の少数の人にしか刺さらず、それ以外の人を寄せ付けないような文章
- 似たような事が繰り返し書かれているために文章量が必要以上に多い(文章量が多いと人の読む気を削いでしまいます)
- 同じようなことが複数箇所に言葉を変えて書かれているが、結局何をしてくれるサービスなのかという結論が見えない
これはほぼ毎回どのお客様に対してもご説明していることなのですが、ご自身が伝えたい内容と、読み手が欲しかったり、読みたくなる内容には差があるものです。
AIを使う場合には指示の出し方を工夫する必要があり、これはコピーライティングを知らない方にとってはなかなかの高度な事だと思います。

誤解のないよう申し添えると、AIが悪いわけでも、もちろんお客様が悪いわけでもなく、プロンプトの出し方が難しすぎる、という事例です。
ちなみに私のデザイナー仲間は、AIでまとめた案をもらって読んでみたら、お客様から口頭で聞いていた一番肝心な箇所が抜けていたと言っていました。
これらのことから、AIが出してきた内容が自分の目的を達成するために最適化されているかどうかは、どうしても人間が知識をもって判断する必要があるのです。

クライアントワークで起きた事例2|AIに誘導されて迷子に…
たとえばchatGPTであれば、良くも悪くもその人に寄り添ってくれて反論せず、さらにはAI自ら誘導してくれるので、AIとのやりとりを繰り返すうちに、知らず知らずのうちに論点がずれている事があります。
最近では、chatGPTと相談してキャッチコピーを考えたというお客様もいらっしゃるのですが、そのキャッチコピーを拝見したときに、何と言って差し上げればいいのか言葉に詰まる事があります。
お客様ご本人としては、自分の想いから始まり、AIと相談しながら決めたという経緯があるのでご納得されていらっしゃるのだと思うのですが、
キャッチコピーというのは、その想いや経緯を知らない誰かが見た時に、好印象を抱いたり、興味を持ってもらうためのもの。
言ってしまえば、初めて見た人に伝わらなければ意味がないわけなのですが、、、、
「えーと、、、これはどういう意味で付けられたのですか?」
と聞いてみると、、、1週半回って斜め上に着地されていらっしゃるのです。。。
キャッチコピーがどういうもので、どう付ければ誰にどのように響くのか、AIが出してきた提案の中から目的を達成できる案がどれで、どこをどう修正すればいいのか。
そういった判断のできる知識が必要になるという事例でした。

AIだけじゃない、雛形にも落とし穴が
似たようなことはAIに限った話ではなく、雛形を使っている場合にも当てはまります。
たとえば有名なPASONAの法則。
Problem(問題提起)、Agitation(扇動・不安を煽る)、Solution(解決策の提示)、Narrow down(絞り込み)、Action(行動喚起)の順で読み手を心理誘導する手法があります。
いくらこの法則に沿った雛形を使っていたとしても、Solution(解決策)が問題を解決できる内容になっていなければ説得力はありません。
雛形もAIも、「考えることを代替してくれるもの」ではありません。
判断を助ける道具であって、判断そのものを任せるものではないのです。
正しい知識があって初めて、効果的な使い方ができますよね。

実はこれ、ご依頼のあったお客様のホームページで見つけてしまい、私へのご依頼はホームページではなかったので指摘できずにモヤモヤしました。
まとめ|AIの提案は人間が確認!判断できる「知識」が人間には必要
「AIの提案はそのまま使うな」と言われる本当の理由は、AIが未熟だからではなく、人が考えるべき判断まで手放してしまいやすいからだと感じています。
そして人が判断するためには、やはり知識が必要になるのです。
この先の進化はわかりませんが、現時点で私が仕事上で感じている限りにおいては、AIに仕事を奪われるということにはならないのではないか、とも思っています。
私の中でAIはやはり、仕事が早くて優秀、でも少しおっちょこちょいな部下や後輩、というイメージです。
指示を出し、時には意見を聞き、仕事を任せる時もある。でも決して鵜呑みにせず、任せっきりにはせず、あくまでも仕上げや最終チェックは自分が行うという付き合い方が良い。
とはいえ私の場合は考えることを止めたくないので仕事を任せることはなくて、調べ物をしてもらったり、私の作った文章を確認してもらったり、意見を言ってもらう相談相手として接しています。
今回は、AIが浸透してきた今、クライアントワークで感じていている「AIの提案はそのまま使うな」と言われる本当の理由について書いてみました。
この記事が、AIって結局どう使えばいいの?とモヤっとされている方の、ストレス軽減になっていると幸いです。
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