日本の食材４「箱根の黒たまご」｜サクッと読める短編読み物

彩葉D&Wの理念の１つが、「日本の食材」を応援すること。

InstagramやThreadsに合わせた「サクッと読める短編読み物＋デザイン＋写真（たまにイラスト）」で、「日本の食材」を勝手に応援&紹介します。

箱根の黒たまご

夫と初めて箱根を訪れたときに連れて行ってくれたのが大涌谷だった。

火山活動が活発になった今は散策路の立ち入りが禁止されているが、以前は煙がモクモクと上り、硫黄の香り立ち込める山肌を登っていくことができた。

散策路の先には売店があって、そこで初めて黒たまごを食べた。

今までも温泉卵は好きでたまには食べていたが、こんなに真っ黒な卵は見たことがなかった。

「この黒たまごを食べると寿命が7年延びるんだよ」

そんなことを教わりながら黒い殻をむき、内側から現れた白いゆで卵に塩を振って食べた。

硫黄の香りが引き立てるのか、卵の旨みが口一杯に広がり、その残り香がふんわりと鼻まで届く。

それ以来箱根を訪れると、たまに立ち寄って黒たまごを食べるのが楽しみになった。

火山活動が最も活発だった一時期には黒たまごを食べられない時期があり、このまま2度と食べられなくなってしまうのではないかと不安になったこともある。

こうしてまた食べられる日が来たことへの有り難みをしみじみと想いながら、黒たまごを口いっぱいに頬張った。

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